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花村 俊吉(はなむら しゅんきち)

[更新:2011年4月]

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研究活動

2003年度

5月から嵐山モンキーパークいわたやまの餌付け群・嵐山E群のオトナのオスとメスを対象に調査を行い、オスとメスの親密さの記述法を模索した。また、夏季に1ヶ月ほど、鹿児島県・屋久島(ヤクシマザルのどんぐり群とうみ群の調査に参加したあと、宮之浦岳に登頂し、島のあちこちを原付で周って堪能)、宮崎県・幸島(台風の接近で半日も滞在できず)、都井岬(ついでに野生馬の群れも観察)、大分県・高崎山(とにかくニホンザルの数が多いが、山へと向かう大行列は荘厳)で、ニホンザル亜種の野生群や嵐山以外のニホンザル餌付け群を観察した。

2004年度

2003年度に引き続き、9月までニホンザルの嵐山E群を対象に調査をおこない、オトナオスの他個体との相互行為と、群れの広がりにおける社会空間的な位置について記録した。これらの結果をもとに修士論文を作成し、12月と翌3月に学会発表をおこなった。また、3月下旬に、宮城県・金華山島でニホンザルの野生群を観察した(3日間だけだったが、主にB1群を観察して、日中にのんびり採食をしながらつかずはなれずに遊動する姿や、小雨の降る夕方に雨をしのげる岩場の泊り場に向かっていく様子に野生ニホンザルの生活を垣間見る。その合間にやはり島を一周したりあちこち歩き回ったりして堪能するも、帰りに強風で一日足止めを食らう)。

2005年度

5月と7月に学会発表を行った。10月からはタンザニア・マハレ山塊国立公園で野生チンパンジーM集団を対象に調査をおこない、チンパンジーのメスの遊動ルートと他個体との相互行為について記録した。とくに長距離音声を介した相互行為に着目し、チンパンジーが離れていて見えない他個体を体験している様を記述する方法を模索した。

2006年度

2005年度に引き続き、10月までタンザニア・マハレ山塊国立公園でチンパンジーM集団を対象に調査をおこなった。6〜7月、M集団で感染症が流行したため、病気個体の症状や行動について調査した。8月には、マハレ山塊最高峰ンクングェ山に登頂し、そのまま国立公園中北部のチンパンジーをはじめとする大型哺乳類の生息状況と人為撹乱について予備的な調査をおこなった(その際、かつてそこで生活していたトングェの調査助手に道案内してもらい、貴重な当時の生活の様子をたくさん聞くことができた)。帰国後、11月と翌3月に学会発表をおこなった。チンパンジーM集団の感染症の流行に関して、ヒトとチンパンジーの間の病気の感染リスクを軽減するための観察ルール等の提案をまとめた報告論文を出版した。

2007年度

チンパンジーの長距離音声・パントフートを介した相互行為とグルーピングとの関連について、主に事例を用いた分析を進め、それらの成果を10月、12月、翌3月に学会等で発表した。2006年に流行したチンパンジーM集団の感染症について5月に学会で発表し、流行の規模や感染個体・死亡個体などの実態をまとめた短報論文を出版した。

2008年度

2007年度に引き続き、チンパンジーの長距離音声・パントフートを介した相互行為とグルーピングとの関連について分析を進め、7月に学会で発表した。8月には、国際会議でニホンザルのオスの社会空間位置の分化機構と移行過程について発表した(会議後に、スカイ島やアイラ島に滞在し、のんびり遊動する羊の群れを観察しつつ島のあちこちにあるスコッチウィスキーの蒸留所を巡り、ここでフィールドワークしたらいつでもうまい酒が呑めるなぁと夢想した)。また、チンパンジーのM集団に他集団から移入してきた新入りメスが、在住個体との相互行為のなかで、M集団に特有ないしその可能性が高いと考えられる「レモン食い」や「湖水飲み」をし始める過程について、主に事例を用いて検討し報告書にまとめた。

2009年度

霊長類の社会について、霊長類学の隣接諸分野の研究者も交えて議論することを目的とした集会を企画・実行し(7月)、その内容の特集を組み、学会誌に投稿する準備をおこなった。また、9月には、チンパンジーの長距離音声・パントフートを介した相互行為と離合集散社会との関連について、主に事例を用いて分析したものを学会で発表した。これらの分析の一部を、フィールドでの自身の体験(違和感)とすり合わせつつまとめたものを、論文集の1章として出版した。

2010年度

2009年度に引き続き、学会誌上で霊長類の社会について議論するための特集の編集作業を続け、年末に出版した。特集の趣旨説明として、現在の霊長類学における社会像を簡単にレビューし、その方法論・認識論上の問題点と個体間の相互行為に着目することの重要性とを指摘した意見論文を、また標的論文の1つとして、チンパンジーの長距離音声・パントフートを介した行為接続のやり方と場の様態について分析し、彼らの相互行為の特徴(人間の相互行為との相違点)や離合集散社会の動態性について考察した原著論文をまとめた。さらに、これらの2論文に対する8名のコメント論文へのリプライとして、動物の相互行為を言語に翻訳することの意味や、擬人主義・人間中心主義の問題について整理した意見論文をまとめた。8月には、国際会議でチンパンジーのパントフートと離合集散社会に関する分析結果を発表した。

執筆文章

論文等

  1. 花村俊吉, 布施未恵子 2010 「他者」としての他個体と「社会的な複雑さ」:特集の趣旨説明. 霊長類研究 26: 121-129.
  2. 花村俊吉 2010 チンパンジーの長距離音声を介した行為接続のやり方と視界外に拡がる場の様態. 霊長類研究 26: 159-176.
  3. 花村俊吉 2010 行為の接続と場の様態との循環的プロセス(コメントに対する返答). 霊長類研究 26: 213-219.
  4. 花村俊吉 2010 偶有性にたゆたうチンパンジー―長距離音声を介した相互行為と共在のあり方. 木村大治, 中村美知夫, 高梨克也編「インタラクションの境界と接続―サル・人・会話研究から」昭和堂, 京都. pp: 185-204.
  5. Hanamura S, Kiyono M, Lukasik-Braum M, Mlengeya T, Fujimoto M, Nakamura M, Nishida T 2008 Chimpanzee deaths at Mahale caused by a flu-like disease. Primates 49: 77-80.
  6. Hanamura S, Kiyono M, Nakamura M, Sakamaki T, Itoh N, Zamma K, Kitopeni R, Matumula M, Nishida T 2006 A new code of observation employed at Mahale: prevention against a flu-like disease. Pan Afr News 13: 13-16.【Web版

エッセイ、報告書、紀要等

  1. 花村俊吉 2011 観察会後記:サルたちの世界を覗く(嵐山のニホンザル観察会「自然教室」の報告記事). 京都科学読み物研究会会報 329: 9-12.
  2. 花村俊吉 2010 イルンビの森にゾウを追って パート@―ムトゥンダさんを偲んで. マハレ珍聞 16: 2-3.【Web版
  3. 花村俊吉 2010 読解:「ずれ」を楽しむ夜中の相互行為. 木村大治, 中村美知夫, 高梨克也編「インタラクションの境界と接続―サル・人・会話研究から」昭和堂, 京都. pp: 227-228.
  4. 花村俊吉 2010 読解:食べることの楽しさと共食の経験. 木村大治, 中村美知夫, 高梨克也編「インタラクションの境界と接続―サル・人・会話研究から」昭和堂, 京都. pp: 356-357.
  5. 花村俊吉 2009 社会の学としての霊長類学(第3回)―「他者」としての他個体と「社会的な複雑さ」(大会記事). 霊長類研究 25: 81-82.
  6. 花村俊吉 2008 移入メスと他個体のやりとりに着目したチンパンジーの「文化」研究へのアプローチ―マハレMグループのチンパンジーの「レモン食い」と「湖水飲み」. 西田利貞編「平成16年度〜平成19年度 日本学術振興会科学研究費補助金研究成果報告書 野生チンパンジーにおける新奇行動の展開と文化的行動の発達過程」pp: 303-307.
  7. 花村俊吉 2008 チンパンジーの聴覚的な出会いの生成・拡散と消失の過程―長距離音声・パントフートを介した相互行為とグルーピングとの関連(発表抄録). 生態人類学会ニュースレター 14: 7-9.【Web版(pdf)
  8. 花村俊吉 2007 チンパンジーが他者を体験する時―離れていて見えない個体どうしの相互行為から(発表抄録). 生態人類学会ニュースレター 13: 25-29.【Web版(pdf)
  9. 花村俊吉 2007 離れていて見えないチンパンジー(とヒト?)どうしのお付き合い. マハレ珍聞 10: 3.【Web版
  10. 花村俊吉 2007 夕闇に舞うインスワたちの下で. マハレ珍聞 9: 4.【Web版
  11. 花村俊吉 2006 12頭の精霊. マハレ珍聞 8: 2-3.【Web版
  12. 花村俊吉 2006 地震との遭遇. マハレ珍聞 7: 1.【Web版
  13. 花村俊吉 2005 ニホンザル餌付け群におけるオスの空間的位置とメスとの社会関係(発表抄録). 生態人類学会ニュースレター 11: 23-24.【Web版(pdf)
  14. 花村俊吉 2005 嵐山のニホンザルにおける近接・相互行為からみた雌雄個体間関係と雄の生活史. 霊長類研究所年報 35: 116.

共著論文

  1. Kaur T, Singh J, Tong SX, Humphrey C, Clevenger D, Tan W, Szekely B, Wang YH, Li Y, Muse EA, Kiyono M, Hanamura S, Inoue E, Nakamura M, Huffman MA, Jiang BM, Nishida T 2008 Descriptive epidemiology of fatal respiratory outbreaks and detection of a human-related metapneumovirus in wild chimpanzees (Pan troglodytes) at Mahale Mountains National Park, Western Tanzania. Amer J Primatol 70: 755-765.
  2. Fujimoto M, Hanamura S 2008 Responses of wild chimpanzees (Pan troglodytes schweinfurthii) toward seismic aftershocks in the Mahale Mountains National Park, Tanzania. Primates 49: 73-76.

学会およびシンポジウム、研究会での発表等

責任発表

  1. 花村俊吉 2011年4月(口頭)「嵐山のニホンザル社会における境界の生成と観察―『動物』の表象をめぐる『自然/人間』製造システムに抗してのなかで」境界研究会 京都大学(京都).[発表要旨【Web版】:境界研究会のHP]
  2. Hanamura S August 2010(Poster) Ethonomethod of the interactions through long-distance call, pant-hoot and the relation with their fission-fusion grouping pattern of chimpanzees at Mahale. XXIII Congress of International Primate Society, Kyoto, Japan.[Abstract: 霊長類研究(Primat Res) 26 suppl: 406(No. 806).]
  3. 花村俊吉 2009年9月(ポスター)「言葉をもたないチンパンジーの共在のセンス―長距離音声を介した相互行為の『形式』と『場』の分析から」第6回日本質的心理学会大会 北海学園大学(北海道).
  4. 花村俊吉, 清野(布施)未恵子 2009年7月(企画・主催)「社会の学としての霊長類学(第3回)―『他者』としての他個体と『社会的な複雑さ』」第25回日本霊長類学会大会自由集会 中部学院大学(岐阜).[企画趣旨【Web版】: 霊長類研究 25 suppl: 15.]
  5. 花村俊吉 2009年7月(口頭)「彼らの社会的現実を目指して:チンパンジーの長距離音声を介した行為接続の『形式』とその『身構え』」第25回日本霊長類学会大会自由集会「社会の学としての霊長類学(第3回)」中部学院大学(岐阜).
  6. 花村俊吉 2008年7月(口頭)「離合集散を生み出すチンパンジーの長距離音声・パントフートを介した相互行為」第24回霊長類学会大会 明治学院大学(東京).[発表要旨【Web版】: 霊長類研究 24 suppl: S17.]
  7. Hanamura S August 2008(Poster)Male socio-spatial distribution and male-female interactions resulting in male escape in a provisioned troop of Japanese macaques (Macaca fuscata) at Arashiyama. XXII Congress of International Primate Society, Edinburgh, UK.[Abstract: Primate Eye 2008: 96(No. 243).]
  8. 花村俊吉 2008年3月(口頭)「長距離音声・パントフートを介した相互行為とグルーピングのあり方―チンパンジーの聴覚的な共在の生成・消失」第13回生態人類学会研究大会 富山県氷見市元湯魚眠洞(富山).
  9. 花村俊吉 2007年12月(口頭)「離合集散するチンパンジーのメスと他個体との「共在」の多様なあり方―視界内・外の他個体との関わりのなかで発声/聴取される長距離音声・パントフートの分析から」コミュニケーションの自然誌研究会 京大中央総合研究棟(京都).
  10. 花村俊吉 2007年10月(ポスター)「チンパンジーが長距離音声パントフートに『返事しない』とはどういうことか?」第26回日本動物行動学会大会 京大芝蘭会館(京都).
  11. 花村俊吉, 清野未恵子, 中村美知夫, Magdalena Lukasik-Braum, Titus Mlengeya, 西田利貞 2007年5月(口頭)「マハレのチンパンジーにおけるインフルエンザ様の病気」第44回日本アフリカ学会 長崎ブリックホール(長崎).
  12. 花村俊吉 2007年3月(口頭)「チンパンジーのメスの単独性―『離れていること』がいかに社会的な現象か」第12回生態人類学会研究大会 星のふるさと・池の山キャンプ場(福岡).
  13. 花村俊吉, Mtunda Mwami, Mwami Rashidi 2006年11月(ポスター)「予備的報告:タンザニア・マハレ山塊国立公園中北部のチンパンジーと哺乳類の生息状況と人為撹乱」第9回SAGAシンポジウム 名古屋大学(愛知).
  14. 花村俊吉 2005年7月(口頭)「ニホンザル社会におけるオスの空間的位置―嵐山E群におけるメスとの近接がオスの空間的位置に影響を及ぼす可能性―」第21回霊長類学会大会 倉敷市芸文館別館(岡山). [発表要旨【Web版】: 霊長類研究 21 suppl: S2-3.]
  15. 花村俊吉 2005年5月(口頭)「ニホンザル餌づけ群におけるオスの空間的位置とメスとの社会関係 ―空間的位置の分化機構と差異の観察― 」第6回ニホンザル研究セミナー 京大霊長類研究所(愛知)
  16. 花村俊吉 2005年3月(口頭)「ニホンザル社会におけるオスの空間的位置とメスの社会関係」第10回生態人類学会 だて歴史の杜カルチャーセンター(北海道)
  17. 花村俊吉 2004年12月(ポスター)「ニホンザルにおける中心オス、周辺オスのメスとの社会関係」日本動物行動学会第23回大会 九州大学(福岡)
  18. Hanamura S March 2004(Poster)Do Japanese men have an innate preference for women of the lower Waist-to-Hip Ratio? International Symposium African Great Apes: Evolution, Diversity and Conservation, Kyoto, Japan.

共同発表

  1. 藤田志歩, 座馬耕一郎, 花村俊吉, 中村美知夫, 清野(布施)未恵子, 坂巻哲也, 郡山尚紀, 島田将喜, 稲葉あぐみ, 伊藤詞子, 松阪崇久, 西田利貞 2009年7月「マハレ山塊国立公園におけるエコツーリズムがチンパンジーの健康状態に及ぼす影響」第25回日本霊長類学会 中部学院大学(岐阜).
  2. 西田利貞, 藤本麻里子, 藤田志歩, 花村俊吉, 井上英治, 伊藤詞子, 清野未恵子, 松阪崇久, 中村美知夫, 西江仁徳, 坂巻哲也, 島田将喜, 座馬耕一郎 2007年7月「マハレのチンパンジーにおける病気の流行について」第23回日本霊長類学会 滋賀県立大学(滋賀).
  3. 藤本麻里子, 花村俊吉 2007年5月「タンザニア西部で発生した地震とそれに対する野生チンパンジー(Pan troglodytes schweinfurthii)の反応」第44回日本アフリカ学会 長崎ブリックホール(長崎).

新聞取材

  1. 京都新聞 2008年1月17日(朝刊)「京都発サル学の60年 危機と再生:しのびよる環境破壊の前に」

所属学会

職歴(大学での非常勤講義)

研究費、助成金等

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