第1回虫たべっ会
虫はたべもの−日本の昆虫食文化−

2006年2月10日(金)@京都大学理学研究科人類進化論研究室

参加者20名

始めに、野中さんに日本の昆虫食の話をしていただいた。
  1. 問題の所在
  2. 日本で虫を食べるとはどういうことか?
  3. 日本の昆虫食の概要
  4. いろんな種類が食用にされてきた
    いろんな技術がある
    時代変化にも関連
    地域差がある
  5. ハチ食はおもしろい
  6. 1, スズメバチ類の獲得・食用
     
    巣のへ発見の困難さ・危険性
     
    大量捕獲
     
    ハチ追い技術の確立と革新
     
    セミ・ドメスティケーション
     
    市場流通 高価・輸入 
    2, 地域資源としての活用
    村ぐるみで飼育
    村おこし
    3,社会的な利用  
    食事
    ハチ採りの縁



次に調理をした。

zairyou mopani
材料は左:オオスズメバチ(串原産)と、右:モパニです。

hebomeshi
ヘボ(クロスズメバチ)は炊き込みご飯にして持ってきていただきました。炊いてから長い時間が経って冷めてしまっていたため、ヘボ独特の香りを感じることはできませんでしたが、レンジで温めると少し味わいが広がりました。
sumiyaki
スズメバチ料理の中で最も人気だったのが、炭火焼でした。塩をふってもしくは醤油をかけて、個人で焼き加減を調節しながら食べます。ほんのり焼き色がついてアツアツのオオスズメを口に入れると、トローリとした濃厚な味が口の中に広がります。
oosuzume shiraae
次に人気だったのが、白和え。オオスズメの幼虫をつぶしてさっと湯通しした野菜(今回は壬生菜)と和え、塩・醤油で味を調えます。スズメバチを何匹も食べていると、1匹が濃厚であるため、たくさんは食べられないことがわかりました。味はとても美味しいがたくさんは食べられない、そういった特徴を生かしてオオスズメの味を楽しむにはどうしたらよいか、という考えのもとに作られました。
white sauce
そしてまたまた試行錯誤を重ね、バターと小麦粉を使ったホワイトソースが完成しました。これまた、トローリとしたコクのあるホワイトソースができ、パンやクラッカーにのせ、とても美味しくいただけました。

その他、から揚げ、バターいため、ピザ、パテ、パスタ、チーズフォンデュにしていただきましたが、オオスズメバチ自体とても味が濃いものなので、濃い味のものとは合いにくい(味が消えてしまう)ということがわかりました。また、火を入れたほうが味わいが広がるということもわかりました。
mupani dashi mopanimen
次にモパニの料理ですが、これは乾燥して塩で味がつけてあるため、そのままでも十分美味しいです。塩気とほどよい硬さが酒にぴったりです。ほんのり磯の香りがする幼虫です。オオスズメバチと同様にから揚げにしてみたりしましたが、だしにしてみてはどうかという意見が出たので、すり鉢で粉にしてだしをとってみました。これまた想像したよりずっと美味しく、温麺のスープにして虫たべっ会をしめるにふさわしい料理ができました。
mopani tukudani
また、だしをとったあとに漉して集まったモパニのくずを佃煮にしました。モパニ自体硬いものなので、ほどよい食感があり、なおかつ、だしとなって塩気が取れ醤油とみりんがほどよくからんで白ご飯にも酒のつまみにももってこいです。

参加者にとったアンケートの結果、全員が美味しいと答えた。参加者のほとんどが幼少期に虫を食べた経験があったため、参加している人にすでに偏りがあるが、普段から頻繁に虫を食べているわけではなく、味的にみてオオスズメバチなどの虫は現代の人にも十分受け入れられる可能性のある食材であるといえよう。ただ、オオスズメバチは単価が高く(2500円/100g)、入手困難な食材であるため、高級食材として利用価値がつく可能性が高い。
また、虫という食材に対して、参加者が次々とアイデアを出し合うなど、参加者の前向きな姿勢が今回の虫たべっ会を盛況にしたともいえる。そのアイデアを出すきっかけとなったのは、虫が「新規なもの」であったからであろう。
”美味しいのだけど、この料理法はなんか違う”といった気持ちにさせられるワイルドな食材と出会う頻度は、そんなに多くはない。料理は、自分の知っている食材や調味料(の味の記憶)を頭のなかでMIXして作られるので、新たな料理を作り出す可能性が広い人は、自分の知っている食材や、調味料の知識の幅が広い。今回の会を通して、そういった幅を広げる可能性が虫にはまだまだ隠されているように思った。食後には”身体が熱い”という感想も出るなど、精のつく食べ物としての効果も期待できる。

野中さんのゼミで伝えられた、”採る”から”食べる”という一連の流れのなかで、今回は”食べる”というところしか実現できなかったことについて、私(清野)としては不満が残った。”採る”という過程が難しいからこそ美味しさも倍増する、ということを体験するためには、やはり自分で採るところから参加しなければならないだろう。そうして今回食べたものと同じ種類の虫を食べたときに、違った感想が生まれるのではなかろうか。ただ、アンケートの結果では、みんながみんな”採る”ということに対しては積極的でないようで(20名中3名は採りたくはないと答えた)、虫の見た目や味がクリアできても、採ることの難しさが、虫を食べる人と食べない人の違いに影響する可能性もあるようだ。

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