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解説:Nakagawa, N.: Choice of Food Patches by Japanese Monkeys (Macaca fuscata). American Journal of Primatology, 1990, 21:17-29.
                                       

                                                               

(要旨)

 最適パッチ選択のモデルの検証を、野生ニホンザルのある1本のケヤキの堅果採食を材料に試みた。サルは、時期経過に従った樹上と地上の堅果数の推移に従い、より堅果数が多く、採食速度の高い場所を、選択的に利用することにより、採食堅果数を最大化していた。

(解説)

 最適食物パッチ選択モデルを野外で検証するのは以下の理由で難しい。1)異なる食物種パッチ間では栄養組成が異なる、2)選択されなかったパッチの存在を知らなかった可能性がある、3)パッチ間移動に要するコストの評価。そこで、ある年、群れのメンバーほぼ全員がある1本のケヤキ大木をくり返し訪れその樹上で種子を採食することに着目。その後、落果とともに地上採食に移行することを予測して行った。この場合、地上と樹上は、同じ食物を利用し、両方のパッチともその存在を知っていることは確実で、上下ではさほど移動コストに差はないので、上記の問題点もクリアできる。

 拙著『食べる速さの生態学−サルたちの採食戦略』(中川、1999)の中で、日本語で紹介しています。