第22回 「原野の人トングウェ写真篇」
第21回「生態人類学の鼓動、および原野の人トングウェ」でとりあげたトングウェの人たちについて、伊谷コレクションには膨大な写真が残っています。すでに何度も触れたように、1970年代以降のタンザニア政府による集村化計画で、写真に残された当時の生活は消えてしまいました。この機会に、かつての暮らしの様子を皆様にお伝えしたいと思います。
住む
トングウェの家々
海抜2000mのマハレ主稜の集落では竹で、また、湖岸周辺等ではエレファントグラス等を組んで、そこに土を塗りこめ、壁を作ります。屋根はチガヤの類で葺かれています。
トングウェの家々や建材
左上は小屋の前にたたずむ女性たち。右上はトイレと思われます。左下は、建材等を結わえるためのミオンボの樹皮で作ったヒモ。右下は、ボラススヤシ(Borassus sp.)の角材、建材として重宝されていたとのことです。
作る(1)農具、槍、銃
鍛冶屋の仕事
鍛冶屋は、アカコロブスの毛皮をはったフイゴ(右下の写真)を使って、様々な物を作っていたそうです。右上の写真は、カヒル(女性の山仕事の道具)の最後の仕上げです。
刃物類
かつては、農具や槍はもとより、マスケット銃まで作っていたそうです。
作る(2):野生のナツメヤシの若葉からムケカ(茣蓙)を編む
材料と作業
左はウキンドウ(野生のナツメヤシ[Phoenix reclinata]の若葉;スワヒリ語)を干しているところです。乾燥させた若葉を材料に編み始めます。
ムケカを編む・作る
ウキンドウを細長く編んだ後、それをいくつも縫い合わせてムケカ(茣蓙)に仕上げます。色や模様はそれぞれ、作った方の好みです。ウキンドウの採集からムケカを編むまで、すべて女性の仕事です
作る(3)土器つくり
土器作りと土器
小石が混じることが少なく、焼く時に割れないので、シロアリ塚の土を使うと聞きました。土の採取から、土器の生成、野焼きで焼き上げるまで、女性の仕事です。ロクロを使わず、きれいに成形していきます。仕上げには、表面を石でこすって滑らかにしてから、ナツメヤシの若葉で編んだカネギオという道具を、柔らかい土器の表面を転がし、縄目をつけます(縄文土器の縄文を連想させます)
土器を使う
土鍋や、水がめ(水を運んだり・貯えたり[素焼きで、蒸散する気化熱で水が冷えます]、主食のキャッサバを水晒する)等、色々な用途に使います。また、煙草のパイプ(右下)等にも用いられます。
食(1):畑を耕す、収穫する、飼う
焼畑の開墾や、鳥獣害を防ぐ見張り台
木々を斧と山刀(パンガ)で伐り払い、乾燥させてから火をかけます。乾季の男性の重要な仕事です。一方、雨季での播種(種まき)は女性の仕事になります。
キャッサバ畑
左は、1980年代にマハレのシンシバ集落で、老夫妻が営んでいたキャッサバ畑とアブラヤシ。獣害をふせぐため、柵で囲っていました。右は成長したキャッサバ畑。
作物を貯蔵・家禽を飼う
左上は、乾燥したトウモロコシをつるしておく場所。右上はニワトリ小屋、そして左下はニワトリと犬。この3枚は第21回で紹介した集落ブスングウェでの撮影と思われます。右下の写真は、湖岸で飼われていたアヒル。
食(2):食品加工・調理
作物を加工する
左上はトウモロコシを粉にするすり臼、左下は木製の臼。中央は、杵と臼でキャサバか、トウモロコシ等を粉にしているところ。右は、粉をふるいにかけている女性。
調理と食事
左は、食事の準備で、トウモロコシやキャッサバ粉でウガリを捏ね上げています。右は、できたウガリで食事をしている母と幼児。
食(3)鳥や獣を狩る
左から鳥をとるため、一風変わった矢尻の弓矢、マスキット銃、そして猟師たち
原野で、銃とともに生きる
食(4)罠を仕掛ける、蜜を採る
罠の数々
左の写真は、押し罠。右上は、はね罠の仕組み。右下は、シフコ(モグラネズミ)用の竹筒で作った罠
罠(続き)とハチミツ採取
左上は、ケインラット用の罠ルキンダ。左下は、ハチミツ採取用に木に仕掛けられた蜂箱ムジンガ。右は、蜂箱から蜜を採る際、ミツバチをマヒさせるため、くすべる葦の束シアカ。
食(5):魚を取る
タンガニイカ湖での漁獲
左はカシハの湖岸で、朝、刺し網でとれた魚を水揚げしているところ。立っている男性は長年、西田利貞さんのアシスタントとして、論文の共著者にもなったりしたラマザニ・ニュンドウ。右はタンガニイカ湖産のオオナマズと、その解体。
このほかにも、様々な魚を獲っていました
幼児と母親、そして子供たち
母と幼児
子供たちは明るい
(以下、次号)
編集・執筆:高畑由起夫
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