どたばた昆虫記
私が探す編

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鈴鹿山麓、とある場所
探検の殿堂主宰のキッズ探検隊vol.13”ユキムシを探しに”に参加した。
久しぶりの雪山に心躍り、子供たちにまけじと、雪の上を無我夢中になって歩きまわった。
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セッケイカワゲラ
探索を開始して1時間ほど経過して、ようやくお目当てのセッケイカワゲラが見つかった。
この虫を最初私が見つけたとき、この虫は明らかに私の方に向かって歩いてきたように思えた。
おっ、きたな。カメラを向けてこちらへ向かってくるのを待つ。一度見つけても取り逃がしてしまうような心配はない、なぜならばこの虫たちは羽が退化しているのである。セッケイカワゲラはクロカワゲラの仲間で、冬から早春にかけて羽化する(原色昆虫大図鑑V 北隆館 より)いわば、完全に低温生活に適応している虫たちである。
積もった雪の表面に出て歩き回っている個体は、産卵のためによい場所を探している雌らしい。流れのある水で生まれる子供たちのため、太陽コンパスと傾斜を使って川の上流を目指して動き回っているそうだ(エコソフィア第8号 pp30-37, 幸島司郎さんの研究から)。その内容は以前読んだことがあったが、今回のセッケイカワゲラとの対面を期にもう一度読んでみると、幸島さんの文章が生々しく私の中に伝わってきた。
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産卵に際して水面に腹部末端を接触させると、腹端部に付着していた卵塊は水に触れて卵塊が散る(原色昆虫大図鑑V 北隆館)とかいてあったが、この右上にあるつぶつぶはどうやら卵の塊らしい。卵塊は移動中に付着したままでも平気なのだろうか?それとも私が滋賀から持ってくる際に水が溶け、そのときに腹部が水に触れ、腹部から出てきたのだろうか?だとしたら、死んでから産んだのか?どれくらいの温度まで生きていることができるのだろうか?先に産卵のことを知っていれば、生きているときに腹部を確認し、その後に水につけてみてどのように産卵するかを確認したのに・・・。
また採りにいかなければ。
幸島さんがヒマラヤで研究したヒョウガユスリカの幼虫は、積雪の下にある氷河氷の表面を流れるトンネル状の水路周辺の氷の中から見つかり、彼らは水路に溜まる粒上の泥を食べて生活しているという。それは、雪のなかにまばらに存在する藻類やバクテリアが溶け、水の流れにのって沈殿したところで生活するという、氷界で生活する虫たちの知恵である。おそらく、セッケイカワゲラもそういった生活スタイルと同様な繁殖をしているのであろう。昆虫の生活の多様性に改めて感服する。
(2006年2月12日)



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コカマキリ卵のう
京大植物園にて。植物園観察会中に見つけた。
テーマは「森で語ろう」だったのですが、またテーマとは無関係に虫を見つけるために森を歩いていました。
また、植物名プレートの下で越冬する虫の姿を探すことができました。今回は卵です。写真の卵塊はそれそのものが
卵なわけではなく、卵はこの中に入っています。確か夏にコカマキリの産卵シーンを屋久島で観察したことがあります。
尾部からクリームのようなものがピーっと出てきて、それはまるでケーキ職人が綺麗にデコレーションしていくように、
直線、折り返して、直線という作業を繰り返し、この卵塊の形を作っていたのを思い出しました。他には落ち葉の上を
ふらふらと羽ばたいていた双翅目の一種など。寒い寒い冬がやってきたのです。

植物園は人間が手入れしている森です。本来、ここにはそのなかで生きる哺乳類いて、植物を食べたり消化して糞を
出すという流れもこの森の中にはあったはずです。人間によって手入れされるというのは、森が自然のまま更新していく
のを手助けするような形ではなく、人間にとって都合のいいように維持されているのがほとんどです。例えば、道を人間
の歩きやすいように整えるとか、人間にとって大量発生されていやな虫は除外してしまうとか。でも、それはほんとうにその
森を「維持している」ことになるのでしょうか。

人間の都合で排除されたところに住んでいる虫や植物は、他の生きる場所探します。
きっと、それは人間にとって不要なものは排除するという形で森を見ようとする人には一生見えないでしょう。
動物たちは、自分の都合で森のものを不必要に排除することをしません。そういった生き方を知っている人たちと、
上の人たちとの間では自然観の食い違いがひどくなるばかりです。
(2006年1月19日)



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ゴマダラチョウ 幼虫

京大植物園にて。11月23日の植物園観察会中に健吾くんが見つけてくれました。
テーマは「鳥と木の実」だったのですが、そのテーマとは無関係に虫を見つけては、ときめいておりました。
これは、エノキの葉についているゴマダラチョウの幼虫です。拡大写真で見てわかるように、幼虫の体表面から糸が出ているのがわかりますが、幼虫は糸を出しながら移動しているらしい(健吾くん談)。この糸があるから、3本の脚を使わなくても葉にくっついていられるのですねぇ。すごいです。葉の主脈に沿ってまっすぐにくっついたこの幼虫は、なんだか死んでいるようにも見えますし、寝ているようにも見えます。
冬にむけての準備がちゃくちゃくと始まっております。
(2005年11月23日)



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冬を越す昆虫たち

京大植物園にて。12月15日の植物園観察会中にて。
テーマは「ツリーイングってなんだろう」だったのですが、またテーマとは無関係に虫を見つけては、ときめいておりました。
ヤチダモのネームプレートの下で越冬しているのは、エサキモンキツノカメムシと、ガ類の蛹です。このカメムシは先月の
観察会のときにも、他の樹のプレートの下で越冬していました。この虫を探していた嘉田さんは、「こんなところにいたのか!」
と感激されていました。実はこの昆虫、夏場は子を保護するらしいのです。「日本動物大百科8昆虫T 平凡社」によると、
”寄主植物の葉裏に卵塊を産み付けたのち、メス親はそのうえで体を覆い隠す姿勢で静止し、敵の接近や攻撃に対して背
面を盾にするように体を傾ける、あるいは翅を激しく羽ばたくなどの防衛反応を示す”そうです.
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私は、このカメムシを屋久島で見かけたことしかなかったので、私にとっては「背中にハートマークがついたかわいいカメムシ」
でしかなかったのですが、今回の観察会を通して、この虫は「面白い行動をするエサキモンキツノカメムシ」として、私のなか
で認識し直されました。このカメムシをプレートの下で見つけた嘉田さんにとっては、「ミズキなどの樹に寄生し、落葉層で越冬
するカメムシ」だったのが、「じつはネームプレートのしたでも越冬したりすることのあるカメムシ」という認識に変わったようです。

このように、観察会に来て、なにを吸収して帰るかは人それぞれです。主催者の意図通りに感動して帰る人もいれば、
私のように違うことを考えて帰る人もいます。そのようななかで大切なのは、その会に参加し、なんらかのことを発見する、
または感じるということなのだろうなぁと思いながら、植物園をあとにしました。
(2005年12月15日)

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