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解説:中川尚史.霊長類の食物選択:究極要因と至近要因.日本味と匂学会誌,2001,8:19-24.
                                       

                                                               

(要旨)

 一般に霊長類は、栄養成分である蛋白質や糖質含有量が高く、消化阻害物質である粗繊維や縮合性タンニン含有量の低い食物を選択的に採食している。こうした食物選択は、個体の栄養状態を良好に保ち、多くの子供を残す結果に繋がると考えられることから、生存上・繁殖上の機能的な、言い換えれば究極的な意味があると言える。他方、彼らがこうした選択をする直接の手がかり(至近要因)は味である。最近、盛んに行われている各呈味物質に対する閾値や嗜好性の種差を食性の違いから論じる研究は、その手がかりを明らかにするだけでなく、それらの違いに機能的な意味があることを示唆してくれる。

(解説)

 日本味と匂学会のシンポジウムにおける講演の原稿を加筆・訂正した、霊長類の食物選択に関する総説です。霊長類の食物選択の究極要因については、同じく総説として日本生態学会誌に発表済み(中川,1996でしたので、講演では当学会参加者の専門領域に合致するよう、これに加えて食物選択の至近要因とも関わる研究を紹介することにしました。当初は印刷物にするなどとは伺っていなかったので講演を引き受けた次第ですが、口頭発表だけならまだしも私の専門領域ではない至近要因と関わる総説を書くのは力量不足であることは否めません。しかしながら、乗りかかった船で引くわけにもいかず、また、近年盛んな研究領域でもありますので、単に研究紹介以上のものではありませんが、執筆いたしました。前半の究極要因に関しては中川(1996をご覧頂くことにして、短編でもありますし、後半だけでもざっとお目通し頂ければ幸いです。