行動生態学的研究
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下線部をクリックすれば、当該論文の詳細情報がご覧になれます。 対象:ニホンザル(Macaca fuscata)
行動生態学における重要テーマである最適採食モデル、特に最適食物パッチ利用のモデルの検証を金華山島の野生ニホンザルを材料に試みたところ、次のような知見が得られた。1)サルは基本的に質の高いパッチで選択的に採食し た(Nakagawa, 1990a)。しかし、2)質の高いパッチで長時間、低いパッチで短時間採食する傾向は見られなかった。また、3)採食バウト内で採食速度が顕著に低下する例は極めて少なく、これが原因でパッチからの立ち去りが起こったと考えられる事例はまれであっ た(Nakagawa, 1990b)。こうしたパッチ利用に加えて、食物選択の問題を最適採食理論及び従来の霊長類採食生態学において位置づけ た(中川,1989)。その後、これまでに行われてきた霊長類の食物選択研究をレビューしたところ、多くは成分の含有量に注目し、蛋白質含有量の高いもの、繊維やタンニン含有量の低いものを選択しているという報告が多かった。しかしながら、その多くは葉の選択に関する結果であって果実選択については意外と少ないことが判明した。他方、食物種毎の資源量と採食頻度の相関関係をレビュ−してみると、果実については正の相関を示すことが多いことが分かった。つまり、霊長類は大きくて大量にある果実種を選ぶことにより、食物の探索や摂取に要するエネルギーや時間を節約しているという食物選択の古典モデルの予測が意外と当てはまることを明らかにした(中川,1996)。 対象:パタスモンキー(Erythrocebus patas)
他方、パタスモンキーにおいては、非血縁個体間で頻繁に行われるアロマザリング行動の進化要因を探る研究を始めた。そのきっかけは、血縁関係にないことはもちろん、互恵的な交渉の交換が不可能な他群の赤ん坊をさらい、その赤ん坊を多くの雌がアロマザリングし、授乳までする個体が見られたという事例の観察であ る(Nakagawa, 1995)。そこで、パタスの赤ん坊のdistress callを、血縁個体(母親ではなく祖母)と非血縁個体にプレイバックしたところ、音源に向かって走り寄ったり、音源の方を立ち上がって見たり、コンタクトコールで応えたりといった強い反応が頻繁に観察され、しかもこうした反応の仕方に血縁・非血縁個体間で差が見られなかった。パタスではアロマザリングされることではなく、アロマザリングすることと毛づくろいすることが交換されているという報告(Muroyama, 1994)もあわせて考え、パタスの非血縁個体によるアロマザリング行動の進化は、互恵的利他主義により説明しうるものではなく、父系の血縁選択で説明しうるのではないかという予測を立てた。つまり、上述の非血縁個体というのはあくまでも母親の家系を通じては血縁関係にないという意味であり、単雄複雌群を形成するパタスでは母親は違っても同じ世代の個体の父親は同じであるということが起こりやすいという根拠による(Nakagawa, 1998)。なお、以上の結果、ならびにその基礎となる植生調査の結果は、拙著にて日本語で紹介されている(中川、2007) |
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中川尚史サル学研究室
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