”人類進化論”研究
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下線部をクリックすれば、当該論文の詳細情報がご覧になれます。 ヒト以外の霊長類の文化と言えば、幸島のニホンザルのイモ洗いのような食物獲得行動に関わるものか、チンパンジーやオランウータンの道具使用に代表されるように道具という物質文化に関わるものが主流であり、ヒトの文化では重要である社会的な行動の文化が注目されることは少なかった。そんな中、チンパンジー、キャプチンそして最近になってクモザルで社会行動の文化に目が向ける研究者が少しずつ出始めたが、ニホンザルでは初めての社会行動の文化を報告した。具体的には、抱擁行動が金華山と屋久島ではその機能は同じであるにも関わらず、その型が微妙に違うというものである(Nakagawa et al., 2015)。 ヒト以外の霊長類の近年の分子生態学的手法の進展に伴って、雌雄いずれの性が生まれた土地から遠くに分散するかについての知見が蓄積されてきた。これらを集約して系統樹に載せることにより、霊長類の祖型は雄偏向分散だが、真猿類の祖型の段階で雌偏向分散となった可能性が50%あり、その後は少なくとも類人猿の祖型までは引き継がれたとみなせることになることを示した。そのうえで雌偏向分散のみならず単雄単雌という社会構造も、真猿類の祖型から類人猿の祖型、さらには初期人類まで引き継がれたとする新仮説を提唱した(中川、2009;Nakagawa, 2013)。 |
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中川尚史サル学研究室
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