解説:中川尚史.栄養素の小窓からーフィールドと実験室を結んでー.村山美穂ほか編『遺伝子の窓から見た動物たちーフィールドと実験室をつないでー』,p.419-436,2006,京都大学学術出版会,京都.
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(解説) 本書は、京都大学霊長類研究所生化学研究部門(当時)におられた竹中修教授の退官記念論文集であり、惜しくも追悼論文集を兼ねることになった書です。ただ、よくありがちな雑多な内容ではなく、竹中先生が病に冒されながらも熟考されたその主題『遺伝子の窓から見た動物たち』とその副題「フィールドと実験室をつないで」に端的に表れているように、鋼のような太い筋が通っています。編者のひとり村山美穂さんが、竹中先生の指導のもとニホンザルの父子判定を始めて以来、霊長類のみならずさまざまな分類群を対象とした研究者が竹中研に集い、DNAによる父子判定、性判定技術を学んできました。本書はその奮闘の記録です。そんな中、私は、村山美穂さんが父子判定をはじめるより前に、栄養分析の手法を学ぶべく所内生活史研究部門(当時)から竹中研に通いはじめていました。本書を真似た主題『栄養素の小窓から』、および、さらには下記の小見出しから分かるとおり、栄養分析の奮闘の記録で、遺伝子と栄養素の違いはあれ、フィールドと実験室をつなぐための研究報告です。ただ、結果、つまり小見出しで言えば、「<栄養素の小窓>を開けて見えたこと」については、他の拙著(『食べる速さの生態学』、『サバンナを駆けるサル』でも詳しく紹介しているので、中心は実験の過程そのものになっています。(価格:3,800円+税)。 (小見出し) なぜ<栄養素の小窓>を開けることになったのか?/<栄養素の小窓>を開ける準備<栄養素の小窓>/<栄養素の小窓>の開け方/<栄養素の小窓>を開けて見えたこと/<栄養素の小窓>からさらに見えること/<栄養素の小窓>を開けてみての感想 |