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解説:Nakagawa, N: Book Review of “The guenons: diversity and adaptation in African monkeys” (eds. Glenn ME & Cords M). Primates, 2004, 45: 207-210.
                                       

                                                               

(要旨と解説)

 私にとっては,はじめての英文書評です。

 本書は,2001年1月にオーストラリア・アデレードで開催された国際霊長類学会(IPS)の1シンポジウム”The Genus Cercopithecus: an update"の講演をもとに編集されました。シンポジウムのタイトルからも伺えるように,そしてもちろん本書にも明記されているのですが,本書は,1988年に出版されたそれまでのグエノン研究の集大成集である"Primate Radiation: Evolutionary Biology of the African Guenons"以降に行われた最近のグエノン研究を整理することを意図して書かれたものです。

 1988年といえば私自身が博士後期課程に入ってパタスモンキーというグエノンの研究をはじめて3年目に当たります。グエノン初心者の私にとって,24編中16編もがレビュー論文で構成された"Primate Radiation"はどれほどためになったかは計り知れません。それ以来,パタスモンキーに関する英語論文を9編発表し,実はこのときのIPSでも,パタスについての発表をしたのです。しかし,残念ながら本書のもととなったシンポジウムにはお呼びがかからず,一般の口頭発表でした。その憤りのためととられては困るのですが,"Primate Radiation"には遠く及ばない内容の本と言わざるを得ません。

 ですから,あまりここで内容の詳細を翻訳して書く気にはならないのが正直なところです。そこで,書評と言えどオリジナリティーにこだわってみたことについて,簡単に触れます。そのオリジナリティーとは,書評に表を入れたことです。Primates誌の西田利貞編集長には,これは珍しいと言って頂きました。何をわざわざ表にしたかというと,本書が比較対象にしていた"Primate Radiation"と,編者,章立て,収録論文数,うちレビュー数,論文当たりのページ数,写真の数,価格などなどを比較してみたのです。

 で,この表を通じて言いたかったことはやはり,レビュー論文の数で26編中たった4編,しかもそのうち2編は短い概説,1編は著者自身の研究のレビューというべきもので,本当の意味でのレビューは1編に過ぎないのです。もちろん,個々の論文を見るといい論文も掲載されてはいますが,非常に優れたレビュー満載だった"Primate Radiation"に比べると,やはり見劣りするのです。

 本当の意味で,"Primate Radiation"の後継本が今後待たれるところです。いや,ホンマは私が企画せなあかん,そんな年齢なんでしょうが・・・。