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個体群生態学的研究
                                       

                                                               

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対象:パタスモンキー(Erythrocebus patas)

 サヘルサバンナ帯にあたるカメルーン国カラマルエ国立公園に生息する野生パタスモンキーの1群KK群の断続的ではあるがおよそ14年間の調査に基づき、出産季、初産年齢、出産間隔、オスの移出年齢、メスの死亡率などの人口学的データが得られた。出産季は乾季中期に当たる12月末から2月中旬であった。彼らは近縁の森林性グエノンに比べて大型であるにも関わらず、初産年齢が早く(36.5ヶ月)、出産間隔が短い(12ヶ月)ことが分かった。また、出自群からの移出年齢は、2.5〜4.5歳であった。KK群の群れサイズは、1984年と1987年の間に劇的に減少して後は1994年まで徐々に増加し、1997年までの間に再び減少した。また、隣接群のBB群も同様の傾向を示した。こうした個体数の減少は、3年間にわたる旱魃により引き起こされているようであった。オトナメスの年間粗死亡率は、1987年から1994年の間の個体数増加期では4%に過ぎなかったが、減少期を含むすべての期間の平均値では22%に達した。他方、森林性グエノンの1種ブルーモンキーでは、より小型であるにも関わらず4%に過ぎない。また、幼児の年間死亡率は、個体数増加期13%であったが、すべての期間では37%に達した。他方、やはり小型のアカオザルのそれは10〜12%との値がある。以上のパタスの結果は、オトナ死亡率が高く幼児死亡率が高い哺乳類は、体の大きさのわりに、初産年齢が早く出産間隔が短いという哺乳類の生活史進化の理論モデル(Charnov、1991)と一致するものであった。また、モデルではオトナ死亡率を淘汰圧、幼児死亡率を高い繁殖率がもたらす高密度による結果とみなした。われわれの結果は、前者を支持するものの、後者を支持するものではなかった(Nakagawa et al., 2003)(中川、2007)。

 

 

Copyright (C) 2003 中川尚史サル学研究室
最終更新日 : 2007/08/21