伊谷純一郎 フィールドノート

52−10 幸島
 (私にとって5回目の野外調査で、幸島についての6番目のノートであり、1952年12月23日〜25日の3日間のもの。全体としては36冊目のノートであることがわかります。)
 前述のように、幸島では8月半ばに餌付け成功。ただちに識別・分類して観察を続けましたが、性交渉は全く見られません。ついに、12月も終わりになって雌に発情の兆候があり、配偶関係をつくった雄と雌が、第5位のオス(ゴスケと呼んでいた)を、海に追い落とし、このオスは猟師に助けられるという事件がおこります。ゴスケはしばらく檻に隔離して、群れのサルとの交渉を見ました。そのときの情景は、一連のノート、53−2のP.82、P.84に、スケッチがのっています。
 あとは、群れのなかにおける性的交渉がほとんどを占めていますが、これと、私の1953、1954年の高崎山のデータを併せて、今西さんがカレント・アンソロポロジーに論文を出し、S.Zuckermann が Papio comatus について書いた1930年代の論文、"Sex causes society theory" つまり社会集団をつくるのは性であるという説を激しく批判しました。この論文をめぐるカレント・アンソロポロジーの各専門家による議論は有名です。

 

 

 

 

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