中川尚史中川尚史 “ふつう”のサル(の)学研究室

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解説:中川尚史.2013.霊長類の社会構造の種内多様性.生物科学,64:105-113.

(解説)

本稿は、松本晶子さん(琉球大学)が生物科学誌において企画した「霊長類野外研究の現在」という特集に所収された5編の総説のうちのひとつです。本特集は松本さんの手による序文の末尾にかかれているとおり、若い人たちに霊長類学に興味を持ってもらうことが主旨であり、同じ意図で『日本のサル学のあした』の編集を開始していた私は強く賛同して、この特集に寄稿させてもらうことにしたという経緯があります。ほかの執筆者と題目を列記すると、五百部裕さん「日本人研究者によるアフリカにおける野生霊長類研究の過去」、保坂和彦さん「野生チンパンジーの長期研究から見えてくるもの」、鈴木滋さん「同所的に生息するゴリラとチンパンジーの種間関係を探る」、松本晶子さん「サバンナに生息するヒヒの研究」で、私と同学年か少し下、つまり50歳前後で私自身はあまり自覚はありませんが、一般的にはシニアの研究者と呼ばれる人たちで、かつ「野外研究」だけを扱っているところが、『日本のサル学のあした』と大きく違うところでしょうか。

さて、拙稿の内容ですが、一時隆盛を極めた霊長類の社会構造の近縁種間の社会構造の多様性を、食物の分布と捕食圧、それによって決まるメスの分布、および子殺し圧によって説明しようとした社会生態学モデルとその検証研究を概説することからはじめ、私自身が明らかにしたパタスモンキーの雌間の順位序列の厳格さの種内差をはじめとして、社会生態学モデルを種内変異に適用する最近の流れを紹介しました。そのうえで、実は日本霊長類学の黎明期においてもニホンザルの社会構造に、「寛容性」というキーワードでくくることのできる種内変異があることが知られていたことに再び焦点を当て、それを最近ニホンザルに関して得られた知見を加えて、検証し今後なすべきことの展望を展開しています。

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