中川尚史中川尚史 “ふつう”のサル(の)学研究室

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解説:中川尚史.〝ふつう〟のサルが語るヒトの起源と進化.2015,204 pp. + x ぷねうま舎,東京.

(要旨)

 サルからヒトは何をもらい、何を捨てたのだろう?“ふつう”のサル「の」学からの報告.ニホンザルの抱擁行動の文化、サバンナに生きるパタスモンキーの長い足と、食餌の関係、ヒトの社会の原像を探して(帯紹介文より)

(目次)

はじめに──なぜいま、〝ふつう〟のサルから人類の起源と進化を探るのか
1 霊長類研究から人類の期限と進化を──サル学とは
2 人間中心主義から類人猿中心主義へ──類人猿認知科学研究の進展
3 〝ふつう〟のサルのわけ──著者の個人的な理由
4 サル学事始め
5 本書の課題
コラム サル学の現場から① 野外研究とセレンディピティ

第1章 ニホンザルの社会行動の文化
1 動物の文化的行動
2 ニホンザルの抱擁行動
3 文化としての抱擁
コラム サル学の現場から② ニホンザルの稀な行動

第2章 ヒトの社会の起源とその進化
1 人類進化と霊長類社会のあらまし
2 地理的分散の性差──性偏向分散
3 初期人類の社会構造──群れ構成、婚姻形態、性偏向分散、男の育児、縄張り性
4 社会の重層性について
コラム サル学の現場から③ 金華山A群第一位オス・キヨシロウの移出

第3章 ヒトの長肢化の選択圧──平行進化
1 サバンナのサルとヒト
2 ヒトの進化の改訂版 パタスモンキーモデル
コラム サル学の現場から④ 発展途上国の僻地での暮らし

むすびに代えて

後記

参考文献

引用文献

(解説)

 20年以上、霊長類学の存在意義とも言える人類の起源と進化の解明に背を向けてきましたが、「人類進化論」研究室の准教授に就任したことにより改心し、面白さにも目覚め、その後取り組んできた(各章に相当する)大きく3つの課題を紹介した本です。ヒトに近縁な類人猿ではない、“ふつう”のサルしか研究対象としたことがありませんが、そうした“ふつう”のサルからでも人類の起源と進化の解明に役立つことを示すことへのこだわりが本書の存在意義といえます。具体的には、ヒトの持つ形質が類人猿との共通祖先より前にその起源がある場合でその例を1章と2章で、ヒトの持つ形質が類人猿ではないサルで現れることに着目し、生息環境の共通性からその原因を探れる場合で、3章で扱っています。出版時に教授に就任したことから、私自身その所信表明と位置づけています。

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