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チンパンジー
ことばのない彼らが語ること

本の表紙

中村美知夫 著、中公新書、2009年4月刊行、272ページ、定価819円(本体780円)、ISBN978-4-12-101997-4 C1245
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ご案内

 初めて単著で書かせていただいた本です。タンザニア、マハレのチンパンジーを中心に、野生での生き生きとした姿を描くように心がけたつもりです。
 一般の方にも読みやすいように書いたつもりですので、是非多くの方に手にとっていただきたいと存じます。

  ◎2020年度 神戸松蔭女子学院大学(一般入試C日程)の国語の入試問題に使われました。
  ◎2010年度 甲南大学(文系)の国語の入試問題に使われました。
  ◎2010年度 青山学院大学(経営学部)の国語の入試問題に使われました。
  ◎2010年度 京華高等学校の国語の入試問題に使われました。
  ◎2010年 白梅学園大学(子ども学部)の読解力テストの入試問題に使われました。
  ◎2010年 聖マリア学院大学(看護学部)の国語総合の入試問題に使われました。
  ◎読売新聞に書評が出ました(評者:小野正嗣(作家))。
  ◎朝日新聞で紹介されました。


目次

はじめに

第1章 半獣神の末裔
半獣神パン/猩猩/現在の半獣神/700万年の時間/1.23%の違い/「賢い」チンパンジー/意図の問題/セックスと暴力/人間の影としてでなく

第2章 日々の暮らし
チンパンジーとの出会い/マハレの森/他のチンパンジー調査地/調査の一日/日常を見る/チンパンジーの身体/個体識別/食べ物/単位集団と離合集散/性/出産と成長/老いと死

第3章 相互行為
相互行為とは/音声/表情/突撃誇示/身振りと接触/毛づくろい/対角毛づくろい/相互行為の発達/挨拶/食物分配/求愛/社会的遊び/自分の足と遊ぶ

第4章 社会
動物の社会学/社会とは/集まりとしての毛づくろい/順位序列/「不在」のある社会/メスは非社会的か/孤独なオスたち/メスの移籍/孤児たち/社会の進化/社会の歴史性/社会と文化

第5章 文化
背中を掻く文化?/チンパンジーの道具文化/今西のカルチュア/文化霊長類学/物質文化/文化の機能?/チンパンジーは模倣が苦手?/チンパンジーは教えない?/母親からの積極的関与/文化は情報の伝達か/チンパンジーの民族誌/名付けられていなかった行動/恣意的な違い/文化の捉え方/隣接集団間の行動の違い/新しいメス/文化の向こう

第6章 闇
チンパンジーの「闇」?/殺しは悪か?/同種内子殺しの発見/チンパンジーの子殺しとカニバリズム/カニバリズムと肉食との類似/「戦争」/子殺し以外の集団内での殺し/悪魔のようなオス?/メスの攻撃性/強奪/政治・謀略・欺き/マキャベリ的知性/競争の原理/事実と価値

第7章 他者としてのチンパンジー
森が怖くないとき/「他者」がいない?/「私」がチンパンジーを観察する/動物園のチンパンジー/夢に現れるチンパンジー/チンパンジーに挨拶される/盗むマスディ/観光客から逃げる/視線を読む/まだ見ぬ他者/新しい集団の調査/Y集団との出会い/2007年雨季

あとがき

参考図書

誤植・訂正

p.6 5〜7行
「リンネは、ヒトと同じホモ属に含まれる生き物として、ホモ・トログロディテス(穴居人)、ホモ・サテュロス(半獣人)、ホモ・ノクターヌス(夜行人)などを含めた。」とありますが、この表記は間違っているとのご指摘をいただきました。
 私はこの部分をおもにヴェント(1987 『サルから人間へ』法政大学出版局)のp31〜p33のあたりから引用したのですが、どうもこのヴェントの記述が正確ではなかったようです。原典であるリンネの『自然の体系』はラテン語である上、全部で13版もあるため、私がチェックをしなかったのが原因です。この点に関してお詫びするとともに、以下訂正をしておきます。

 まず、「ホモ・サテュロス」という語は、確認した限りではリンネの『自然の体系』には見当たりません(ただし、ヴェントは『自然の体系』からの引用であるとは書いていないので他のところでそうした記述をしていた可能性は残されている)。また、「ホモ・ノクターヌス」というのは種名というよりも、ホモ・トログロディテスの説明として書かれているようです。やや長いですがなるべく正確に書き直してみると、以下のようになります。

「リンネは『自然の体系』第10版(1758年)で、Homo属に含まれるsapiensと同格の種として、troglodytes(穴居人)を含めた。その説明には、Homo nocturnus(夜行性人)、Homo sylvestris(森の人)またはオランウータン、と書かれている。」

 ただし、岡崎(2006)は、現在のオランウータンやチンパンジーがHomo troglodytesなのではなく、それらは(区別されることなく)別属のSimia satyrusに含まれていたのだと考えているようです。それが正しければ、チンパンジーはHomo属から格下げされたわけではなく、もともと別属扱いであったということになります。一方、当時の類人猿的なものをリンネがHomo troglodytesとSimia satyrusに二分したとする見方や(たとえば Markes 2002)、リンネのHomo troglodytesは現在の類人猿であったのだ(たとえば Goodman et al. 1994)とする見方もあります。

 さらに興味深い点として、リンネの同じ版の註にはHomo caudatus hirsutus(毛深有尾人)をHomo属に含むべきかどうか決定できない(ただし帰属を問題としているだけで、存在を否定しているわけではない)、といった旨の記述が見られるようですし、後にHomo lar(第13版グメリン編のSimia lar、現在のHylobates lar=シロテテナガザル)を含めるべきかどうかも検討していたようです(岡崎 前掲文献)。実際、リンネが1771年にHomo larと記載したことがシロテテナガザルの種小名larの根拠になっているようです(岩本 1987)。

 いずれにしても、当時類人猿の分類が大いに混乱していた(オランウータンとチンパンジーの区別すらされていなかったし、架空もしくは伝聞によって多分に歪曲された正体不明の生き物の記述が様々な形で含まれていた)ことと、リンネがホモ属にヒト以外の生き物が入っても構わないと考えていたことは間違いないでしょう。
 この件について貴重なご指摘と関連文献のご教示をくださった佐藤義明さんと、大橋岳さんに深く御礼申し上げます。

p.205 4行、6行、13行
「アクリルガラス」とありますが、日本モンキーセンターの類人猿舎の寝室は2枚合わせの強化ガラスであるとのご指摘をいただきました。謹んで訂正させていただきます。

■著作案内■


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