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解説:中川尚史.ニホンザルの群れの「同心円二重構造モデル」再考.神戸市看護大学紀要, 2000, 4:1-5.
(要旨)
野生ニホンザル群においても、食物パッチのサイズ、密度、分布状況、および捕食圧いかんによっては、高順位雌とコドモが中心部を、低順位雌が周縁部を占めるという空間的構造を示す場合が起こりうる。
(解説)
「野生ニホンザル群においても、食物パッチのサイズ、密度、分布状況、および捕食圧いかんによっては、高順位雌とコドモが中心部を、低順位雌が周縁部を占めるという空間的構造を示す場合がある」という差し障りのない結論しか導き出しておりません。この結論に至る証拠は、それなりに示したつもりではいますが、「同心円二重構造モデル」は、雌と高順位雄、そしてコドモが中心部を、低順位雄が周縁部を占めるというモデルですから、モデルを厳密に検証した形にはなっておりません。野生群においても、高順位雄が中心部を、低順位雄が周縁部を占めており、なぜそうした空間配置が見られるのかについては、ぜひどなたかが整理して頂けると期待しております。本稿をまとめるにあたり、『高崎山のサル』を再読して一番驚いたのは、著者の伊谷先生ご自身が、「同心円二重構造」は環境条件において変化するということを、明確に書かれている点でした。このモデルは、「便宜的な、理解しやすいために作った、模式図に過ぎない」とも書かれ、このモデルが一人歩きする危険性を十分に認識された上で、描かれたものであることに大変感銘を受けました。