中川尚史中川尚史 “ふつう”のサル(の)学研究室

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解説:中川尚史.『霊長類研究』の研究(新版). 霊長類研究,33:59-68,2017

(要旨と解説)

 本稿は。『霊長類研究』初代編集長である杉山幸丸氏による学会理事会および『霊長類研究』編集委員会に対しての直近の批判論文(杉山、2016)に対しての論文発表時編集担当理事(副編集長)であった私の個人的回答論文である。編集委員会としての回答は、村山美穂編集長を中心に取りまとめられすでに公表されているが(『霊長類研究』第14期編集委員、2017)、私は量的データに基づいて反論すべきところは反論するというスタンスで臨んだ。分析の結果、「総説・講座」、「情報・話題(翻訳含む)&意見」、「書評」については、杉山編集長時代を含む第Ⅰ期より、私の編集長時代を含む第Ⅲ期は記事数、ページ数ともに多い傾向があることなどがはっきりした。しかし、杉山(2016)では批判の対象となっていなかった研究分野別の変遷をみると、第Ⅱ期、さらに第Ⅲ期と進むに従い、「生態・集団・社会」といういわゆるフィールド研究への偏りが著しく進行し、バランスを欠いた構成となっていることが明らかとなった。期せずして対象学としての霊長類学にとってゆゆしき事態であることが浮き彫りになった。なお、本稿の題目は、杉山氏による第Ⅰ期の『霊長類研究』のいわば自己評価を行った「『霊長類研究』の研究」のコンセプトや手法を引き継いだゆえのものである。

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