中川尚史中川尚史 “ふつう”のサル(の)学研究室

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解説:中川尚史.書評『日本の哺乳類学②中大型哺乳類・霊長類』(高槻成紀・山極寿一編),霊長類研究,2009,25: 24-27. 中川尚史.書評『日本の哺乳類学②中大型哺乳類・霊長類』(高槻成紀・山極寿一編),哺乳類

(解説)

 本書は2005年夏に札幌で開催された第9回国際哺乳類学会議(IMC9)の記念事業の一環として刊行された全3巻からなる『日本の哺乳類学』の第2巻です。幼少時からアフリカのサバンナの中大型哺乳類研究にあこがれてこの道に入り、Primatologistと呼ばれるより、Mammalogistと呼ばれたい人だったにも関わらず、日本哺乳類学会すらも出たことがありませんでした。そんな中、本書の編者でもある山極さんが企画した鯨類と霊長類の合同シンポで発表するためにこの会議に出席しました。実は、2日目にあった当該シンポが終了した翌日には早々に引き揚げたのですが、正味1日の間に聞いた発表だけでも、十分私の心を満たしてくれました。こうして哺乳類研究の面白さを改めて認識した翌2006年、偶然にも京大農学部で日本哺乳類学会が開催されました。学部時代の先輩である高柳敦さんが実行委員長を務め、学部・大学院通じた先輩の大井徹さんが実行委員であったので、彼らの”脅し”で当初、会員でもなかったのに大会実行委員に引き込まれ、さらには入会も”させられる”はめになりました(前年の経験があったので、実際は進んで入ったのですが・・・)。そして、その会期中、本書の企画・編集会議が開催され、山極さんに頼まれて代理で出席しました(引き受けてから気付いたのですが、私のポスター発表の責任発表時間とかち合ってしまい、共同研究者の下岡ゆき子さんに代理で発表をお願いするはめになったのですが)。
 やがて本書が2008年6月になってようやく刊行されたのですが、ほぼ同時期に出版された『新・動物の食に学ぶ』(西田利貞著)の書評を日本哺乳類学会誌「哺乳類科学」の編集部から依頼されました。大幅にはその内容が変わらない2001年出版の『動物の食に学ぶ』の書評(中川、2002)を「生物科学」に掲載していたのでその依頼はお断りするかわりに、本書の書評を申し出てみました。当初、学会の記念事業で出版した本の書評を自身の学会誌に掲載するのは如何なものかという意見が強く、この話はいったんなくなったのですが、その後、改めて依頼があり、当然お受けすることになりました。
 ただ、本書は序章2章、16章、あとがきあわせて472ページからなる大著であるにも関わらず、「哺乳類科学」では字数制限が厳しかったので、とても書ききれないと思い、当時編集長として原稿不足に悩んでいた日本霊長類学会の学会誌「霊長類研究」にも、姉妹版を書くことにしたのです。それぞれ不案内な章を紹介するという趣旨で、「哺乳類科学」には霊長類(ニホンザル)の章を、「霊長類研究」にはニホンザル以外の哺乳類の章を紹介しました。これまで手掛けた書評でもオリジナリティーを追求してきましたが、今回の書評でのそれは姉妹版書評という点です。どうか合わせてご一読ください。

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