分布

日本に生息するサルはニホンザル一種ですが、屋久島のサルは亜種とされています。ニホンザルは北は、青森県の下北半島から、南は屋久島まで分布しています。ニホンザルの仲間であるマカカ属というサルたちは、熱帯アジアを中心に広く分布しています。たとえば、台湾にはタイワンザルというニホンザルそっくりのサルが、インドや中国にはやはりニホンザルととても近い仲間とされる尻尾の長いアカゲザルがいます。屋久島よりも南の奄美や沖縄の島々にはもともとサルはいません。屋久島のとなりの種子島には、サルがもともといたのですが、1960年代に滅びてしまったようです。これは狩猟が盛んだったためでなく、サルが暮らせる森をどんどんきって植林していったためと考えられています。

全国のニホンザルの群れの75%までが、半径5km以内に隣の群れをもっているとされていますが、たいていの地域では広さも数もあまり多くはありません。屋久島では、海岸域から高度1,900m付近の高山域まで連続した広い地域、さまざまな種類の森にサルがすんでいます。これほど大規模で、いろいろなタイプの森に暮らすサルのまとまりは、日本では屋久島にしかみられません。

1991年から1992年にかけて、屋久島の西部地域をのぞく海岸域全体の分布調査が行なわれました。その結果、調査をした95km^2の範囲の推定頭数は1,296-2,282頭で、群れの密度は、1km^2あたり1群れ弱、群れの数は100群あまりと推定されました。分布の全体的な特徴として、・島の東北部では集団分布密度が低く、・山側では個体数の大きい群れが、海側では個体数の小さい集団が多いこと、が挙げられています。また中部、上部域の分布密度は下部域よりも低いことがはっきりしてきました。さらに、サルは、伐採と植林などのために紐状のかたちに残された天然の広葉樹林を伝い歩くように遊動しており、サルの遊動域の中心は大きな広葉樹林であることもあきらかになってきました。しかし、まだ中部と上部地域についてはまだはっきりとしていないことが多く、また、伐採や猿害問題などでサルをとりまく状況が変化し続けていることもあって、サルと人とが調和をしてくらすためにも、もう少し持続的な調査が必要です。

本土のサルとの違い

本土のサルとヤクシマザルとの大きな違いはほとんどなく、特に見ための差は、ならべて見てみないとなかなかわかりません。ヤクシマザルはホンドザルより少し小型でずんぐりしていて、黒っぽく長く粗い毛をもっています。特にアカンボウの毛の黒さは特徴的です。骨からみると、ヤクシマザルはニホンザルの原型からより遠い、特殊化の進んだタイプといわれています。遺伝子や形態の研究から、ヤクシマザルは何万年か前の氷河期に屋久島が九州と陸続きだった時にわたってきて、すこしづつ本土のサルと違う性質を身につけてきたものと考えられています。

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