繁殖
ヤクザルの交尾期はだいたい8月の終わりから1月の初めにかけてで、交尾 をするのはこの期間に集中しています。さらに、出産の期間はもっと限られていて3 月から5月にしかみられません。ニホンザルの妊娠期間はおよそ6か月なので、メスが 受胎をするのはだいたい9月から11月までの間だけであることがわかります。すなわ ち、12月や1月の交尾は妊娠には直接結びついていないことになります。このように 、ニホンザルが子供をつくることには、はっきり限られた季節性があります。また、 メスがコドモの世話を何年にもわたってするのに対して、オスは子育てに協力しない ので、オスがどうして一年中メスたちと一緒に群れをつくって生活するのかは、コド モをつくることだけではうまく説明がついていません。
交尾期には、メスもオスもふだんつきあいのない個体とも積極的に近づき あって、時には群れの外のオスやメスとさえ、交尾をすることもあります。屋久島で は、小さい群れがたくさん隣り合って生活しているために、群れという枠をこえた繁 殖のありかたがニホンザルにとってとても重要であることがわかってきました。
メスは交尾期のあいだずっと発情をして交尾をしているわけではありませ ん。メスにはヒトと同じような月経周期があり、そのなかの1/3ほどの期間のみ交尾 をします。一回の発情でメスは複数のオスと交尾をすることが普通です。そのため、 オスのみならずメスにとってもコドモの父親が誰であるのかはわかっていないようで す。ただし、メスはどのオスとも交尾するわけではありません。さきほど出てきたよ うに、オスは群れを次々と移っていきますが、このためにオスが血縁の近い自分の母 親や姉妹と交尾をすることはほとんどありません。これは近親交配の回避とよばれて いる現象ですが、サルを含めていろいろな動物もまた、どちらかのコドモが親元を離 れていくことによって近親交配が起こらないようになっています。
個体数の増減
屋久島では、メスは、新生児が死なない限り、ほぼ2年に一度の割合で出 産します。双子は稀で、たとえ生まれてもどちらかのアカンボウは死ぬことがほとん どです。そもそも、生まれてから一年以内に新生児が死亡する割合は26%にのぼり、 コドモをのこすまえに死んでしまうサルの割合はもっと高くなります。
群れの個体の数は、出産や死亡のほかに、先ほどあげたようにオスが群れに 入ってきたり出ていったりするために、増えたり減ったりします。人の手が加わらず 自然のままで生活する集団の個体数は比較的安定しています。餌を与え続けた群れの ようにどんどん大きくなっていくようなことはありません。前に述べたように、群れ の個体の数がふえて、分裂して2つになったり、逆に数がへって滅びてしまうことも あります。数が増えたり減ったりすることは、いろいろなことがくみあわさって起こ ります。そのひとつに群れ同士の関係があるとされています。
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